森下レポート...復元フォトモ「丸亀あらたし文化商店街」糸崎公朗展

神戸モボ・モガを探せ!プロジェクトの第2弾、戦前のホームムービーの上映会(11月6日、13日、20日)が間近となり、準備に慌ただしくしています。

○神戸モボ・モガを探せ!プロジェクト第2弾「ホームムービーが捉えた戦前の神戸ー桝田和三郎映像集ー」
http://d.hatena.ne.jp/kobe-mobomoga/20091010/p1

そんな中、香川県丸亀市のギャラリーアルテで地域の古い写真を活用する企画があると聞いて、昨日訪ねてみました。建物や町並みの写真を切り貼りし、立体化するという「フォトモ」で著名な糸崎公朗の作品展。江戸時代後期から明治にかけて人気のあった立版古や切り組み絵の現代版と呼べるものです。

会場には10点ほどの作品が地図やキャプションとともに展示されていました。

【会場写真1】

【会場写真2】

【会場写真3】



ギャラリーのあるアーケード付き商店街のタバコ屋さんや元食堂にも飾られていましたが、もちろん写真はこれらのお店の方々が提供したもの。現在の一角にお店の昔の姿を写した古い写真が唐突に挿入され、過去と現在とが出会っています。

【会場写真4】



これらの「復元フォトモ」化は普段は無意識のうちに行われている「写真を見ること」の造形化といえます。関心を持ったものが前面に浮き出てきたり、位置が変わり、数も増加する——地域の皆さんから提供された写真をこのように新たに読み取り、作品に仕上げています。一度写真になりいわば均質化したものを、アーティストの視点から再構築することといえます。写真をそのまま展示しても、地域の方々の思い出話しが盛り上がることにはなるでしょう。私たちの3月の「開港5都市モボ・モガを探せ!」展もそうでした。だが、当事者として写真に接することの出来る方々(いわば語り部)がもはや存命でない遠い将来においては、これは期待できません。

「復元フォトモ」のような形でのアーティストの関わりは、外からの眼の導入になり、古い写真を単なる郷愁の対象に閉じ込めてしまう危険性から逃れることにもつながると思います。つまり、未来のある時点でその都度保存した写真の新たな文脈への置き換えや、思ってもみない視点からの再構築が重要になるということです。

私たちの神戸モボ・モガを探せ!プロジェクトにとっても、今後の活動の展開を考える上で、非常に興味深い示唆となりました。

本展は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(現在、「昭和 写真の1945-1989 —カメラがとらえた戦後の日本—」展開催中)との地域連携プログラムで、他にもいくつか企画があります。

なお、ギャラリーの移転に伴い、本展は11月以降は瀬戸内海に浮かぶ本島で開催されます。アクセスなどはギャラリー・アルテのサイトを参照してください。

http://www5a.biglobe.ne.jp/~Arte2000/index.html